一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
うめき声で我に返り、急いで彼から体をどけた。
「大丈夫ですか」
きれいな顔を歪ませている男性を覗き込む。彼は苦痛に目を細めて私をじろりと睨み、胸を押さえながらゆっくり身を起こした。
「おまえ――」
「雅臣、大丈夫⁉」
慌てたように女性が駆け寄ってきた拍子に、ふわっと甘い匂いが漂う。彼女はきれいに弧を描いたたっぷりのロングヘアを揺らしながら、心配そうに男性に声を掛けた。
「今、坂城さんを呼んでくるわ」
「いや、いい。なんともない。それより」
芝に座り込んだまま、彼は私を振り返った。切れ長の瞳に見下ろされ、条件反射のように体が固まる。
「おまえ、いったい」
「雅臣様!」
遠くから低い声が響いて、目の前の男性が小さく舌打ちをした。