一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
気が付くと、傍らにしゃがみこんだ女性にまじまじと見つめられていた。
「この野良猫、どうするの?」
はっとして広い胸から離れると、彼女はつやつやした唇を楽しそうに開いた。
「一緒に遊ぶ?」
「……未希、おまえは帰れ」
「ええ⁉」
長いまつげの目を見開く美人を一瞥し、『雅臣様』は立ち上がる。その瞬間、ふいに足元が浮いて、思わず悲鳴を上げた。
「ちょっと雅臣ぃ!」
声を尖らす彼女をおいて、私を担ぎ上げた彼は芝の上を歩き出す。
先ほどの木の上ほどではないにしろ、地面が遠かった。身長156センチの私を易々と抱えてしまう彼は、きっと180センチを超える長身だ。
「や、下ろして!」
「騒ぐな。不審者として突き出されたいか」
「私は不審者じゃ」