一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「おまえ、塀を乗り越えてきただろ。それなら立派な不審者だ」

 夕暮れの庭園をずんずん進みながら、彼は冷たく言い放つ。

「二條家に忍び込んだとなれば簡単には帰してもらえない。警察に引き渡される前にあれこれ調べ上げられて、下手したら不法侵入のほかにも罪を着せられて牢獄行きだ」

 一連の恐ろしい言葉に血の気が引いた。青くなっている私をちらりと見上げて、二條家で使用人を使う立場の彼は皮肉っぽく笑う。

「なにせ、数えきれないくらい恨みを買ってる家だからな、ここは」

 座り心地がよさそうなラブソファがいくつも並んだレンガ敷きのテラスから、彼は靴を履いたまま室内に上がる。

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