一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「へ……」
なにが起きているのか、一瞬わからなかった。言葉を失っている私を尻目に、彼女はブラウスの上から私の胸をむぎゅむぎゅと揉みしだき、「ふむ」とうなずいた。
「やっぱり、大きいわね。サイズいくつ?」
「な、なにするんですかっ⁉」
隠すように両腕をクロスすると、伊都さんは考え込むように目線を上げてからふたたび私を見下ろした。
「あのね、私、今ハマってるソシャゲがあるの」
「はい?」
脈絡のないカミングアウトに頭がますます混乱していく。雅臣の思いがけない事情を知らされ、いきなり胸を掴まれ、脳の容量はすでにいっぱいだ。パニック寸前の私を置いてきぼりにして、伊都さんはさっきと打って変わって楽しそうに頬を持ち上げる。
「ソシャゲって罪よね。終わりがないんだもの。どんどん進めちゃう」