一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
絶句する私を見て、伊都さんは薄く微笑む。眉を下げ、まるで私を憐れむようにつぶやく。
「かわいそう。旦那様から愛されることもないのに、のこのこ二條家に来ちゃうなんて」
猫のような目に見下ろされながら、ちがう、と心の中で訴える。
私が雅臣に愛されていないことは、最初から知っている。この先愛されることがないことだって、ちゃんとわかっている。
それなのに、どうして胸が痛むの。
女好きの遊び人だと思っていたときよりも、一途に想い続けている人がいると知った今の方が、呼吸が乱れるくらいに苦しい。
「でもまあ、そんなことはどうだっていいのよ。私が確認したいのは別のこと」
伊都さんはすました顔で言うと、いきなり両手を伸ばしてきた。真剣な目で見下ろされ、首でも絞められるのかと思った次の瞬間、力強く両胸を掴まれる。