一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
確認するような問いかけだった。目の力に気おされそうになりながら、どうにか答える。
「書類上だけ、の話でしょ?」
婚姻届には、雅臣邸に引っ越してきたその日に記入も捺印も済ませていた。
今日、彼の両親への挨拶が叶ったから、使用人だか秘書だかの手によって役所に提出されているはずだ。
とてもあっけないと思う。
結婚なんて、紙切れ一枚で簡単にできてしまうただの契約ごとだ。そのあと契約当事者が夫婦として過ごしていかなくても、本人たちがそれでよければ法には触れない。
「それでも、おまえが俺の妻であることに変わりはない」
胸の底に響くような低い声で、雅臣は口にする。有無を言わさぬ傲慢な態度なのに、不思議と恐怖も嫌悪感も湧かない。それどころか、深く澄んだ茶色の瞳に睨まれると胸が甘く高鳴る。