一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「――だったら、俺にはおまえを好きにする権利があるってことだよな」
男らしく節の目立つ指が、そっと私の頬を撫でて唇に触れた。
きっとこんなふうに、整った顔と強引な甘さでたくさんの女の人を虜にしてきたに違いない。
こみ上げてきたのは怒りだった。
この状況でどうして腹が立つのか、自分でもよくわからない。ただ雅臣の欲望が自分に向けられた途端、具体的に見えた気がしたのだ。御曹司にそっと寄り添う、遊び相手の影が。
「そんなの、契約にはなかったじゃない」
「夫婦っていうのは、そういうものだろ」
ぐいっと顎を持ち上げられ、唇が合わさる。
息をのんだまま呼吸ができなかった。
はじめてのキスは想像以上に甘く柔らかな感触で、全身の神経が一瞬で溶けたみたいに動けない。