一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 彫りの深い顔に筋張った手。体全部がごつごつした無骨な造りなのに、雅臣の唇はびっくりするほど柔らかい。

 このまま、触れていたい――。

 そう思う自分に驚いて、あわてて雅臣の顔を押しのけた。

「やめて! 女ったらし!」

 ソファの隅の方に体をずらして逃げながら、目を細めて私を見ている彼を睨みつけた。

「私を相手にしなくても、遊び相手のところへ行ったらいいでしょ」

 思い浮かんだのは車の前に立っていた女性の姿だ。栗色の長い髪を背中に流した、とても色っぽい女の人。

『未希』

 雅臣がそう呼んでいた彼女が、もしかしたら彼がずっと思いを寄せている人なのかもしれない。

 そんな考えに、ちくりと胸が痛む。

 結婚したいのに、なにか事情があってできない想い人。

 彼女との関係を続けるために、雅臣は私を代役に立てた。

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