一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
斜め掛けにしたバッグから封筒を取り出そうとすると、迫力たっぷりの二條の人は思いがけない言葉を放った。
「……おまえ、瀬戸口アキラの娘だろう」
「父を、知っているんですか」
「当然だ。瀬戸口アキラと言えば、今や押しも押されもしない現代アーティストだ。その作品点数の少なさからマニアが買いあさったせいで、近年ますます価格が高騰してる」
凛々しい眉をほんの少し持ち上げて、思い出すように言う。
「……生前うちが管理する倉庫で絵を描いていたという話を、ちらっと聞いたことがある」
いったん言葉を切ると、大きな手を広げて大げさに肩をすくめた。
「皮肉だな。死んでから絵の価値が上がるなんて」
返事をせずに、私は黙って唇を噛んだ。