一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
父のアトリエを引き払ったのは、父自身が事故に遭って帰らぬ人になったからだ。
父が残してくれたのは絵画だけだった。当時の私は五歳になったばかりで、パート勤めだった母の収入だけでは食べていけず、生活のためにやむを得ず遺品である絵をすべて売った。
それから数年後、とある蒐集家の目に留まったことがきっかけとなり、父の絵は高値で取引されるようになった。だけどその時点で私たちが所有する絵はひとつもなかった。父のファンという人から支援の申し出を受けたこともあったけれど、父の名前を借りて誰かの世話になるわけにはいかないと、母はきっぱり断った。
そして母は、私のために懸命に働いてくれた。彼女のおかげで、私はつつましくも幸せに今日まで暮らしてこられたのだ。