一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ただ椅子に腰かけているだけで圧倒的なオーラを放っている目の前の男性を、まっすぐ見据えた。父のアトリエが二條グループの倉庫にあったといっても、父自身は二條の人間と相対したことなんて一度もないに違いない。
何百とあるグループ会社のうちの一社が所有している倉庫の片隅に、息をひそめるようにしてスペースを借りていたのだから。
そっと息を吐いて、バッグから取り出した封筒を正面に掲げる。震えそうになる手をどうにか堪えた。
このなかには二百万円ほどの大金が入っている。まさしく、血の滲むような努力をして貯めてきたお金だ。母と二人で生きていくために、あるいは母の病院代にするために。母のために使おうと思っていたお金だから、今この瞬間使えるのなら少しも惜しくない。