一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「まあね。気に入ったグラスやお皿があれば購入することもできるわよ」
「そういうことではなくて」
ボックス席に腰を下ろす彼女を、テーブルに置かれたキャンドルライトが淡く照らす。ろうそくが入っているグラスには繊細な細工が施されていて、ゆらめく炎をうつくしく増幅している。
「ここはお酒を飲む場所……つまり、バーですよね⁉」
どう考えても買い物帰りにちょっとお茶をしに来るところではない。おまけにあちこちにさりげなく飾られたクリスタルのキャンドルスタンドやらオブジェやら。あれらはもしかして、泣く子も黙るラグジュアリーブランドのクリスタル製品なのでは……。
「いいじゃない、バーだって。おいしいケーキが食べられるんだもの」
普通に考えたら、二十歳になったばかりの大学生がこんなお店に出入りできるのもおかしい。そう思うけれど、伊都さんは店員とも顔見知りのようで彼女がなにも注文せずとも心得たようにショコラケーキと焼き菓子が載った皿が運ばれてきた。