一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「誰も彼も、決して本音を口にしない。そんな人たちと友達になりたいと思う?」

 つやつやの唇についたクリームをナプキンで拭って、彼女は紅茶に口をつける。

「善みたいになーんにも考えてなかったり、晴兄みたいにすべてをわかったうえでうまく立ち回って利用できる器用な人なら、うまくやれるんでしょうけど。私や雅兄みたいに正直な人間には難しいのよ」

 頭に思い浮かんだのは、車の後部座席にもたれて脚を組んでいた雅臣の姿だ。私と結婚の条件について話をしていたとき、彼は自分に近づいてくる女性たちを『ハイエナ』と呼んで断罪していた。

「だからオンラインがいいのよね。誰も私のことを知らないから、対等に話してくれる」

 伊都さんの言葉は、私がこれまで考えたこともない類の疑問を生じさせた。

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