一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「もたざる者の強さ、ですか……」
ふと、店内に「いらっしゃいませ」という控えめな声が響いた。なにげなく目を向けた瞬間、おもわず「あ」と声が漏れる。
「うわ」
同時に声を上げたのは伊都さんだ。見ると眉間に深いしわを寄せている。
お店に入ってきたのは、長い栗色の髪をうしろで束ねた女性だった。
体のラインが出るぴたりとした服は、スカートに大胆なスリットが入っている。スタイルの良さを前面に押し出したその人は、私たちの方を見てわずかに眉を上げた。
「あら、伊都さんじゃない」
「……こんにちは、連城さん」
頬がひきつったような不自然な笑みを浮かべる伊都さんに薄く微笑みかけて、連城と呼ばれた女性は奥のカウンター席につく。それを見やって伊都さんは聞こえないくらいの声でつぶやいた。
「……ビッチ」
手にしていたフォークを置いて、彼女は立ち上がる。