一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ビニールシートがかけられた木材やなにかの古い機械が置かれているこの場所は、どこかの倉庫らしい。さほど広くはないスペースで、ゆっくり歩を進める彼から逃れるように、コンクリートの地面をあとずさった。
「愛ちゃんと話したくて、ずっと機会をうかがってたんだ。それにしても驚いたよ、まさか常務と結婚してたなんてさ」
沢渡さんは落ち着いた様子で、あくまで一歩ずつ間合いを詰めてくる。ほこりっぽい空気が汗ばんだ肌に絡みつくけれど、こみ上げる不快感はそのせいだけじゃない。
「沢渡さん。ここはどこなんですか」
「なにか弱みを握られてたんだろ? そうじゃなきゃ、あんなやつと結婚なんかするもんか。だって愛ちゃんは金なんかには釣られない子だろ?」
「沢渡さん、聞いてください。私は」