一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

『お前は黙って俺のそばにいろ』

 雅臣の声が、遠くから聞こえた気がした。

「いいえ! それでも私は、あの人のそばにいます。この先、なにがあっても」

 たとえ雅臣が心の底では別の人のことを想っていても、私は彼のそばにいたい。

 こんな状況で思い出すのは、雅臣のことばかりだ。

 子どもっぽく悪態をつくところやイジワルな笑顔、広い胸に抱きしめられたときの優しいぬくもり――。

「キミを幸せにしてあげられるのは、僕だけだよ」

 ふいに声のトーンを抑えて、沢渡さんは私の左手を掴んだ。万力で締めつけられたような痛みに、思わず呻き声が漏れる。

「愛ちゃん、キミは騙されてるんだよ。常務はただ金を持ってるだけの最低な人間だ」

「やめて」

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