一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 不気味に光る真っ黒な瞳が、徐々に近づいてくる。呼吸を乱しながら、彼は唇の端でくくっと笑った。

「あんなヤツ、二條の名前がなきゃなんにもできないクズ同然だ」

 思わず体が動いていた。

 パンと乾いた音が響き、手のひらに痛みが広がる。私の平手打ちを受けた沢渡さんが、呆気に取られたように私を見下ろす。

「愛ちゃん……?」

「それ以上言ったら、許さない」

 恐怖で体がすくんでいたはずなのに、心は燃え滾るようだった。こみ上げる怒りに、手のひらが震える。

「夫を侮辱するのは、やめてください」

「夫って。なに言ってるんだよ愛ちゃん。あいつは」

「あの人――二條雅臣は、私にとって、この世にふたりといない大切な人です!」

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