一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 倉庫中に響くような声で言い放つと、沢渡さんの頬がひくりと痙攣した。蒼白だった顔がみるみる憎悪に赤く染まっていく。

「この、分からず屋」

 髪を掴まれて強引に上を向かされた。鋭い痛みに顔をしかめながらも、唇を奪おうとする彼を両手で押しとどめる。

「いや!」

「こうなったら、力づくでも」

 ますます強く髪を引っ張られたとき、すぐ近くでバンッと激しい音が響いた。何かが爆発でもしたかのような振動に目を向けた瞬間、もう一度激しい音を立てて出入口の扉が乱暴に開かれた。

「愛‼」

 飛び込んできた人物を見て、息をのむ。

「雅、臣……?」

 仕事帰りの格好のまま一瞬立ち止まった彼は、私たちを見つけると慌てたように沢渡さんの胸倉をつかんで私から引きはがした。

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