一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ベッドから下り、椅子に掛けてあったカーディガンを手に取る。当初は着るのが恥ずかしかったレース仕上げのワンピース型ネグリジェも、慣れてしまえば肌触りが良くて重宝している。その上にカーディガンを羽織り、部屋のドアを開けた。
足元に配置されたダウンライトが廊下を淡く照らしている。上に続く階段をしばらく見上げて、私は足を踏み出した。
この家に来て三ヶ月ほど経つけれど、三階にはほとんど上がったことがない。一段一段踏みしめるようにステップに足をかけ、静かに歩を進める。たどりついたフロアはひっそりとしていた。
廊下をまっすぐ行くと、突きあたりにシアタールームがある。その手前が雅臣の部屋だ。
忙しなく響く心臓を落ち着けるように、ふうっと大きく息を吐いた。
時刻はあと五分ほどで真夜中の十二時。以前、夜型だと言っていたから、きっと起きているはず。