一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 意を決して、扉をノックした。しんとした廊下にコンコンと硬い音が響く。

「雅臣、起きてる?」

 少しして、内側からドアが開いた。本でも読んでいたのだろうか。ナイトガウンにメガネという見たことのない無防備な姿に、胸が跳ねる。

「どうした、こんな時間に」

 いつになく不思議そうな顔で私を見下ろす彼を直視できないまま、私はもごもごと口を開いた。

「いえ、あの……その」

「なんだ? はっきり言え」

 眉を潜める彼に、目をつぶってどうにか口にする。

「い、一緒に寝てくれませんか」

 雅臣はぽかんと口を開けた。

「……は?」

「べ、ベッドが広すぎるから、落ち着かなくて寝れないんです」

 慌てて言葉を続けながら、頬は燃えそうに熱かった。自分でも何を言っているんだろうと思うけれど、もう引き返せない。

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