一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「だから、一緒に寝てほしくて」
恥ずかしすぎて雅臣の顔を見られず、カーディガンの裾を握り締めてうつむいた。
心臓がこれまでにないくらい音を立てて、いまにも破裂しそうだ。
しばらく沈黙が漂ったと思ったら、はあとため息が聞こえた。
「断る」
低い声に目を上げると、雅臣はふいと顔を逸らした。
「ひとりで寝るのが寂しいなら、楓に泊まってもらうなり、伊都を呼ぶなりすればいい」
「なんで、ですか」
断られるとは思っていなくて、胸が軋む。私と目を合わせない雅臣をじっと見つめた。
「どうして、ダメなの?」
「どうしてって。あのな」
ふたたび大きなため息をついて、彼はどことなく言いづらそうに口にした。
「隣で寝てるのに手も出せないなんて、そんな生殺しみたいな状況を受け入れられるわけないだろ」