一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
 粘膜から直に流れ込む雅臣の体温に、落ち着くどころか高揚していくのが自分でもわかった。そっと唇を離す端正な顔も、上気しているように見える。

 手を伸ばして、メガネの柄に手を掛ける。彼も気づいたようにわずかにうつむいて、されるがまま私の仕草に身を任せた。雅臣からメガネを外した途端、すぐにまた唇が合わさった。

「ちょっと、メガネがまだ」

 ナイトテーブルに置こうと思っていたのに、という言葉も雅臣の舌に絡め取られてしまう。

「壊すなよ」

 小さくつぶやいて、彼は私の首筋から鎖骨へと唇を這わせていった。

「や、ちょっと」

 裾から入り込んだ手に胸をまさぐられ、くすぐったさに体をひねる。メガネを持ったままの私の手を片手で覆うと、雅臣は耳もとでくすりと笑った。

「大事に扱え。職人に作らせた一点ものだ」

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