一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「うそ。待って、それなら」

 ちゃんと向こうに置いておかなきゃ、と口にする前に、胸もとに唇を付けられて悲鳴を上げた。甘い刺激に力が入りそうになり、あわててメガネを枕もとに置く。

「待ってってば」

「待たないって言っただろう」

 皮肉っぽく笑う顔に、頬が燃えた。焦ってるはずなのに、甘ったるい感覚が胸に広がっていく。

「なんで、そんなイジワルするのよ」

 なんだかくやしくて目を伏せると、思いもよらない答えが返ってきた。

「おまえが可愛いからだ」

 目を上げると視線がぶつかった。着ていたものを脱いで私を見下ろす彼は、めまいがしそうなほどの色気を放つ。

「だいぶ待たされたからな。これくらいの悪戯は許されるだろ?」

「ずるい」

 どうしてそんな目で見るのよ。

 なぜ愛しいものを愛でるように、優しく笑うの。

< 248 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop