一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

***

『俺は愛を知らない』

 雅臣がそう言って自分のことを話してくれたのは、一週間前。はじめて体を重ねた日の夜だった。

『俺の親父は最低の父親で、最低の夫だった。だから俺は、妻を愛する夫というものを知らない』

 それは、私が口にした『どうしてやさしくしてくれるの?』という問いかけの答えだった。

 私の髪をすきながら、雅臣はキングサイズのベッドのヘッドボードに寄りかかって、遠くを見るようにつぶやいた。

『俺の妻になった人間には、母のように寂しい思いをさせたくない。だから、俺なりに理想の夫でありたい思った』

 結婚したいと思える女性がおらず、特定の彼女を作ることも面倒。だけど、いつか結婚したら変わらなければいけない。

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