一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「あの絵に描かれてたからな。似合うと思った」

「……やっぱり、そうだったのね」

 母の最後の願いだった、父の絵。そこには若かりし日の母と赤ん坊の私を囲むように、たくさんの花が描かれていた。黄や白のバラや温かい色合いのガーベラ、グリーンのカーネーション。すべて母の好きな花だ。それらを花束にして、雅臣は母のお見舞いに来てくれたのだ。

 私が父のことを話したから、雅臣はあの絵を見たのだろうか。

 長い石段をのぼりきると、見晴らしのいい丘に出た。拓かれたその場所は小規模の霊園になっていて、景色を臨むように墓石が並んでいる。そのなかの一番高台で、雅臣は足を止めた。

 目の前にはほかの墓石を見下ろすように一本の樹木が立っていた。二條邸にそびえていた桜よりは小さいけれど、生い茂った鮮やかな緑の葉が風に柔らかく揺れている。

< 261 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop