一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
 穏やかな空気に包まれながら、心の中で祈った。

 この地に眠る故人に、あなたの残した家族を見守ってほしいと。

 目を上げると、となりからじっと視線を注がれていた。

「な、なに?」

「ずいぶん熱心に祈ってたようだが?」

「いいでしょう、べつに」

 心の中を見透かされたような気がして慌てて目を逸らすと、大きな手にくしゃっと頭を撫でられた。

 いたずらっぽい目で私を見る雅臣は、前よりもずいぶんと穏やかな表情をするようになった気がする。私の思い過ごしか、それとも私の気持ち自体が変わったせいだろうか。

「さて、行くか」

 踵を返し、歩き出そうとした雅臣が急に足を止めて、広い背中にぶつかりそうになった。耳に入った小さな舌打ちに前を覗き込むと、向こうからひとりの男性が歩いてくる。

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