一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「待って、雅臣」

 不思議そうに振り返る彼に、思い切って告げる。

「話を……お義父さまの話を、聞いてください」

「なに?」

 祈り終えて顔を上げる父親と私を交互に見て、雅臣は凛々しい眉を眉間に寄せた。

「愛、まさかおまえ」

 今日、この場所を訪れたのは、私が雅臣に亡くなったお義母さんに会いたいと頼んで連れてきてもらったからだ。そして彼の父親がここに現れたのも――。

『どうしても、お願いしたいことがあるんです』

 坂城さんに案内してもらった二條家当主の書斎で頭を下げたときのことを思い出していると、雅臣が険しい表情を浮かべた。

「話すことなどない」

 そう吐き捨て「行くぞ」と歩き出そうとする彼の腕に、慌ててしがみついた。

「だめです」

「おい、こら」

 腕を引こうとする雅臣に食らいつくように、手に力を込める。

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