一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「なかなか剛毅な嫁をもらったな、雅臣。依子も――お前の母親も、強い女だった」
名前を呼ばれたのは久しぶりだったのだろうか。ずっと吊り上がっていた雅臣の凛々しい眉が、わずかに下がる。小さく舌打ちをして、二條家の次男は私を振り払おうと引いていた腕をゆっくり下ろした。
「この土地は、あれが幼い頃を過ごした場所だ」
枝を広げるハナミズキをちらりと見上げて、二條公親は穏やかに言葉を紡ぎはじめる。
「最新医療でモルモットよろしく新薬を試されるより、自然に囲まれたこの場所で穏やかに過ごす方が、あれにとってはいいと思った」