一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 こちらからのしかかっていたはずが、あっというまに組み敷かれる格好になる。そのまま首筋にキスをされ、胸を触られて、慌てて声を上げた。

「ちょっと、ここじゃ、さすがに」

「……わかってる」

 押しとどめようと伸ばした私の手を取り、指にキスをすると、雅臣はつぶやいた。

「指輪、いい加減に用意しないとな」

 薬指を這う唇の感触に、ぞくぞくと背筋が痺れる。それをわかっているように、雅臣は私の指先を順番に愛撫していく。

 そういえば、あまりに慌ただしい日々が続いていて、指輪のことなんて思いつきもしなかった。

 結婚式は、母の喪が明けてから執り行われることに決まっている。

 入籍を済ませたのにいまいち彼の妻だという実感が湧かないのは、式を挙げていないせいかと思っていたけれど、ふたりをつなぐ証がなかったせいかもしれない。

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