一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「愛、俺と結婚してくれ」
不意打ちだった。真正面から言われた言葉に、ぽかんと口を開けてしまう。
「……なんだ、その顔は」
「だって、もう、結婚してますよ?」
「それはそうだが、前のプロポーズは、あまりプロポーズらしくなかったから」
口を曲げてすねはじめる彼に、笑みがこぼれてしまう。
『瀬戸口愛。俺の妻になれ』
なんの音もしなかった黒塗りの車の後部座席で、不機嫌そうに私を睨んでいた雅臣を思い出す。
もしかすると、彼は彼で必死だったのかな。そう思うと、愛しくてたまらなくなる。
「不束ものですが、どうぞよろしくお願いします」
その場に三つ指をついて頭を下げた。顔を上げると、穏やかに微笑む彼の姿が目に入る。