一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 お互いが同じ気持ちでいる。そういられることが、それがわかることが、これほどまでに幸福だなんて。

「私は、あなたを愛してます」

 想いが言葉になって、自然と口からこぼれた。

 一瞬、驚いたように眉を持ち上げた雅臣は、やがて嬉しそうに破顔した。

「俺もだ」

 お互いの顔が近づき、ゆっくりと唇が合わさる。

 それはまるで誓いのキス。

 肌の触れあいでありながら、気持ちの触れあいでもあり、たくさんの過去が終わりを告げた瞬間であると同時に、ふたりだけの未来のはじまりでもあった。

 甘くて、優しくて、神聖で。

 セミの声が祝福のように降り注ぐなか、雅臣は噛みしめるように私の耳もとで囁く。

< 291 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop