一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「それなら、あなたと結婚したい人はたくさんいるんじゃないですか? だって二條家の御曹司でしょ」

「二條家の人間だから結婚したい。そんなふうに寄ってくる女と籍を入れろと?」

 それまで饒舌に語っていた唇がゆがんで、凛々しい眉が眉間に寄った。不機嫌そうな顔で私を見下ろし、彼は吐き捨てる。

「二條の看板に釣られてきた女を迎え入れる気はない。そんなハイエナ女と婚姻関係を結ぶくらいなら、世間に何を言われようと独身でいる方がましだ」

 深い茶色の瞳が急激に陰って、胸がひやりとした。体内の蒸気を押し出すようにふっと息をつくと、彼はわずかに光を取り戻した目で私を見る。

「俺がおまえを選ぶ理由は、ひとつだけだ」

 低い声は車内の空気を貫くようにして、まっすぐ届く。

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