一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「おまえは、あの刑務所みたいに厳重な二條家の塀を、たったひとりで乗り越えてきた」

 脳裏によぎるのは薄紅の花びらが舞う庭園の景色だ。まるで花吹雪の中に突然現れた妖精の王様みたいに、高貴な光に包まれていた彼――。

「間違いなく、度胸がある。二條の家でやっていくために必要な、唯一の資質だ」

 言葉が出なかった。まっすぐ注がれる視線の強さが尋常じゃない。

 そんなはずはないのに、まるで『おまえが必要だ』と言われた気がした。

「瀬戸口愛。俺の妻になれ」

 これはプロポーズなのだろうか。

 外見ばかりが麗しく、中身はなにひとつ見えてこない二條家の次男――二條雅臣。

「私は、あなたのことを愛してないです」

「……俺もだ」

 振動のない車内で、お互いを睨むように見つめ合う。

 つまりこれは――契約結婚。

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