一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「や、放して!」
「愛ちゃん、俺と付き合ってよ」
耳もとで囁かれ、ぞくりと背筋が粟立つ。
「いや、です」
抜け出そうともがいても、沢渡さんはびくともしない。それどころかますます強く抱きすくめられ、頭に唇をつけられる。髪をなぞるようにこめかみまでキスをされ、その虫が這っているみたいな感覚にぞわぞわと嫌悪感がこみ上げた。
体が震えて、声が出ない。
「照れてるの? かわいいな」
強引に顎を掴まれたと思ったら、顔を覗きこまれた。メガネの奥の瞳は笑っているのにどんよりと陰っていて、怖気が止まらない。
「愛ちゃん、好きだよ」
目を見開いたまま、顔が近づいてくる。
「いやっ」
押しのけようとした手を取られ、完全に身動きが取れなくなる。下りてくる唇にぞっと背筋が寒くなったときだった。
「俺のものに触れるな」