一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 耳に入った声に、心臓が跳ねる。

 聞き覚えのある、この低い声は――。

 沢渡さんの背後に立っている彼と、目が合った。すべてを見下しているみたいな冷たい瞳で、その人は自社の従業員を見下ろしている。

「俺の、もの……?」

 私に顔を寄せていた沢渡さんが動きを止めた。振り返ったその横顔に、驚愕の色が広がっていく。

「え……常務⁉」

「妻を放してもらえますか。沢渡主任」

 沢渡さんの腰を抜かしそうなほどの驚き具合に、常務取締役は口角を上げた。余裕たっぷりの彼に対して沢渡さんは状況が読みこめないようで、目を白黒させている。

 無理もない。

「どうしてあんたがここに。ていうか、え? 今、妻って……」

「行くぞ、愛」

 腕を掴まれ、引きずられるように歩き出す。呆然としている沢渡さんを残して、促されるまま、近くに待機していた車に乗りこんだ。

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