一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「あの、どうして」

 走り出す車のなかで隣を見上げると、二條雅臣は横目で私を見てつまらなそうに答える。

「通りがかっただけだ」

「通りがかったって……」

 その瞬間、いきなり頭を引き寄せられて小さく悲鳴を上げた。こめかみに唇が触れ、驚いている暇もなく、耳にキスをされる。

「え、なん」

 心臓がひっくり返ったように息ができなかった。音のない車内で、至近距離から見つめられる。

 切れ上がった意志の強そうな眉とは反対に目じりはわずかに下がっていて、切れ長だと思っていた目は意外とつぶらでこげ茶色の虹彩が澄んでいる。

 思わず見入っていると、鼻先が触れ合う距離にいた彼が、ふ、と吐息をこぼした。

「目が大きいな」

 ぽつりと言われて、一瞬ぽかんとする。それからとっさに両手で目を隠した。

「どうせ童顔です!」

「誰もそんなことは言ってない」

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