一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 ずっと張りつめていた糸が切れたみたいに、ぼろぼろと涙が落ちていく。

 ふいに肩を掴まれて引き寄せられた。堅い胸に顔を押しつけられ、どことなく柑橘系の爽やかなにおいが鼻をかすめる。条件反射のように、私は彼のシャツを掴んだ。まるで、すがりつくみたいに。

 大きな手が、私の頭をそっと撫でる。子どもをあやすみたいな力強くて優しい感触に気持ちが緩んで、そのまま目を閉じた。





 しばらくして気がつくと、車は停車していた。窓の外は暗く、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる。

「起きたか」

「え、私。寝てた……?」

 ひとりごとのつもりで言うと、上から答えが降ってきた。

「ほんの二十分程度な」

「わ」

 膝にかじりつくような体勢から慌てて飛び起きる。見ると運転席は空っぽだ。ガレージらしき倉庫の前に停車した車の中には、私と彼しかいない。

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