一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

***

 横たわっても足先がちっとも端に届かない大きなソファに仰向けになると、二階まで吹き抜けになった天井が目に入る。

 白い壁に木目調の家具や梁。明るくてぬくもりを感じられるうえにモデルルームのようにあちこち磨き抜かれたこの家は、前に一度入ったことのある古い洋風の邸宅とはだいぶ趣が異なっている。

「うーん、ヒマ……」

 クッションを抱きしめながらソファの上でごろごろしていると、くすりと笑う声が聞こえた。

「紅茶を淹れましたので、お茶になさいますか? 愛さま」

 お盆を手に私の顔を覗きこんだのは、シャツにパンツというシンプルな装いにエプロンをかけた三十代半ばの女性だ。テーブルに紅茶セットを用意する彼女に、私は身を起こしながら抗議する。

「『さま』はやめてくださいって言ったじゃないですか、楓さん」

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