一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「失礼しました。では愛さん。今日はマダムクレージュの焼き菓子がありますよ」
長い髪をうしろでひとつに束ねて微笑む彼女はいわゆるお手伝いさんで、この家の家事全般を請け負ってくれている。
一週間前に二條家にやってきたときは、いったいどんな恐ろしい生活が待っているのかと思っていたけれど、今のところ拍子抜けするくらい穏やかな日々が続いていた。
私に与えられた居場所は、アンティークの家具やシャンデリアが飾られていた重厚な本邸ではなく、同じ敷地内に建つ二條雅臣の邸宅だ。
平日に家事をしにきてくれる楓さんは、二條家の使用人としてずっと住み込みで働いていたけれど、結婚をしてからはパートタイムに切り替えてこの雅臣邸に通っているらしい。
「それにしても、雅臣様が女性をここに住まわせるなんて本当に驚きです」
「またその話ですか」