一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
焼き菓子やケーキが置かれた三段式のスタンドを私の前に置きながら、彼女は苦笑する。
「私は使用人ですから」
「でも、楓さんしかここには入れないんでしょう?」
この雅臣邸に上がることが許されているのは、家族以外では楓さんと彼女の伯父でもある使用人の取りまとめ役、つまりは執事の坂城さんだけらしい。
「私はあの方と付き合いが長いですからね。小さな頃は一緒に遊んだものです。もちろん、弱みもたくさん握っています」
冗談めかして笑う楓さんはとてもさっぱりした女性だ。慣れない環境に放り込まれた私にとって、彼女の存在は救いだった。
「それじゃ、雅臣サマは女性を連れこむときは本邸の空き部屋を使うんですね」
二條雅臣にとってはこちらが自宅で、あの洋館が実家のようなものだ。そう考えると女性を連れ込むのにあちらの家を使うというのは妙なものだなと思った。