一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
この一週間は病院に行く以外はずっとこの邸宅で過ごしていた。不用意に敷地内をうろつくなと言い置かれているから、せっかく広大な庭があるのに散歩することもできない。
なにもしない状態がひどく落ち着かなくて家事を手伝おうとしたこともあったけれど、楓さんに「私の仕事ですから」と断られてしまったのだ。
「花でも育てればいいのかしら」
窓の外に広がる庭園を眺めながら紅茶をすすっていると、突然低い声がした。
「そんな飲み方じゃ、先が長そうだな」
カップを落としそうになり、慌てて片手を添えた。振り返ると、仕立てのよさそうなダークスーツに身を包んだ背の高い男性が立っている。
「雅臣様、おかえりなさいませ」
楓さんにカバンを渡し、彼はネクタイを緩めながら近づいてくる。
「坂城はずいぶんお前を甘やかしてるようだな」