負け犬の傷に、キス
「あーやだやだ。これだからバカップルは」
腕の力を強めようとしたら、希勇くんの背後からカオルさんのジト目が覗く。
反射的に一歩引く。
カオルさんには敵いません……。
「好きなだけいちゃこらしてろよ」
ビャクさんまであっけらかんと冷やかす。
い、いちゃこら!?
そ、そそ、そんな意識してなかったです……。
ふたりはバイクを倉庫に停めると、わたしを通り過ぎた。
扉前で「あ」と振り返る。
「ついでに希勇を先に手当てしてやれよ」
「ノアチたち、警護と留守番ご苦労さま~」
そう言い残すと、伸びをしながら扉の奥へ行ってしまった。
続々とバイクがしまわれていく。
下っ端の人がひとり、広間で待っていた下っ端の人たちの肩を軽く叩いた。
大きく首を縦に動かし、くしゃくしゃにした笑顔を向けられ、待機組の人たちは瞠った目をきらりと潤ませた。
「博くんとユキも寄ってってよ」
「ではお言葉に甘えて」
「シャワー借りてもいいか?」
「もちろん!」
ハクくんとユキさんを洋館に招いたあと
希勇くんの分厚い右手が、わたしの左手とつながった。
体温が低く、少し震えてる。
「俺たちも行こ」
優しく手を引かれる。
かさついた肌に脈をはかるように指の腹をくっつけた。
トク、トク、と希勇くんの音に触れる。
泣きそうになったのを朝日のせいにしようと決め込んだ。