負け犬の傷に、キス
「元気出た?」
間接キスなんてまるで意識してなさそう。
でもずっと心配してくれてた。
わたしのこと考えてくれてたんだよね。
「……ありがとう」
さっきから元気もらいっぱなしだよ。
「わたしのわがまま聞いてくれて、ほんとにありがとう」
「わがまま? これのどこが?」
キョトンとされて、こっちまでキョトンとしてしまう。
「えっ、だ、だって……わたしの個人的な悩みで草壁くんを頼っちゃって、こうやってサボって……」
全部、全部、わたしのわがままでしょ?
「そんなのわがままに入んないよ。どんな悩みだってつらいのは一緒だろ? 助けるのは当たり前!」
かっこいいな。眩しいな。
とても優しくてあったかい人。
会うたびに憧れるのに
いつだって助けてくれる人をけなされたのに
わたしは逃げた。
誤解を解けなかった。解こうとしなかった。
最低、わたし。
「ごめんね……っ」
今謝っても草壁くんには何も伝わらない。
自己満足の謝罪なんか意味ない。
自分に腹が立って、悔しくて……やるせない。
「津上さん」
うつむきがちに隣を見る。
草壁くんはおだやかに微笑んで、目が合うのを待っていた。
「制服のままサボったら見つかったときまずいから、これ食べ終わったら変装しに行かない?」
「変装……?」
「そ、変装。俺もまたいつヤンキーたちと出くわすかわかんないし。……あ、でも白薔薇の制服は目立つからなぁ。移動中に注意されたら面倒だな……」