負け犬の傷に、キス



「似合ってるよ」


「草壁くんも! 似合ってる!」


「へへ、ほんと?」




ほんとほんと!

こくこく頷けば、草壁くんのほっぺがピンク色になっていってキュンとした。



美容師さんに感謝されたけれど、お礼を言うのはこっちのほう。


好きな人に「かわいい」って直接言われるなんて夢みたい。

魔法のかかったシンデレラも、こんな気持ちだったのかな。





「津上さん、クレープ食べない?」


「食べたい!」




イメチェンしたあと。

繁華街を散歩していた道中、派手やかな色合いのクレープ屋さんが目に留まった。


あ、ここって……
先週草壁くんたちが食べてたところだ。




「ここよく来るの?」


「うん、常連なんだ」




ほら、と見せびらかすスタンプカードには、スタンプでいっぱい。


あとひとつ買えば空欄が全て埋まり、クレープがひとつ無料になる。




「俺が買ったら、津上さんの分はタダだな!」


「えっ。せっかくたまったんだし、自分の分を……」


「今度こそ俺にかっこつけさせてよ。……まあ、スタンプカードじゃ全然かっこよくないけど」




目元をくしゃりとさせる笑い方が愛らしすぎて

異論を唱えられなくなる。


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