負け犬の傷に、キス


ずっとかっこいいよ。

少なくともわたしには最初から。


キラキラフィルターがかかりすぎてるのかな。


でも、たぶん、フィルターを外しても
かっこ悪いところなんか見つからないんだろうな。


もし見つかっても、そこも好きになっちゃう自信あるよ。




「津上さん何食べる?」


「えっと……アップルパイ風にしようかな。草壁くんは?」


「俺はツナのやつにする。マヨネーズとたまごが入っててうまいんだ」


「へぇー! おいしそう!」


「あ、んじゃ買ってくるから、待ってて」




他のお客さんのじゃまにならないよう、クレープ屋さんの脇で待ってることにした。



ここのクレープ屋さん、気になってたけど毎回買えずにいたんだよね。


寄り道せず、帰宅して家事をして勉強して。

それがわたしの日常だった。



……そう考えると、今日ってわたしにとって大革命。



サボり、古着屋さん、ヘアメイクモデル、クレープ屋さん……初めてのことだらけ。


草壁くんの日常はこういう感じなのかな。




「……いいなあ」


「一口いる?」


「!?」




ぼんやり呟いたら、下向きの視界にツナマヨのクレープが入り込んだ。


草壁くんいつの間に!?


わたし声出てた!?
しかも聞かれた!!


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