愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
それでもお母さんの好きだと言ってくれた笑顔を貫き通したい。
謎の使命感が私をそうさせている。
「あ、きたきた!
こっちだぞー!」
予約した店が見えてくると、入り口の前で『クリスマスパーティーをしよう』と提案した男子、真田が立っていた。
そこの店は真田の親戚が営むレストランらしく、一部を貸し切りにしてくれたようだ。
中に入ると半分ほどが来ており、クリスマスパーティーということで飾り付けをしていた。
「おっ、ついに華がきたぜ華が!」
見ると、女子の中では私たちが一番早かったようで。
あと3人の女子が来るはずだ。
「真田くん、私たちは何か手伝えることあるかな?」
ここでも好感度を上げにいくつもりで、真田に話しかける。
「い、いや…そんな、川上さんにやらせるわけにはいかねぇからな」
「せっかくのクリスマスパーティーなんだから、私も何か手伝いたいな」
何やら言葉を詰まらせる様子の真田に違和感を覚えていると、沙彩が私の隣にやってきた。
「あっ、愛佳見て。真田のやつ、緊張してるよ」
「う、うるせぇな野々原!」
沙彩の苗字を呼んで、少し照れた様子で睨んでいた真田。
本当に緊張しているようだ。
けれど理由は何だろう。
私とあまり話さないから?
それとも女子と話すこと自体緊張してしまうのだろうか。