愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「あっ」

気持ち悪いぐらいに非の打ち所がない人間かと思いきや、卵焼きの裏側が少し焦げているところに気がついた。


「もー、失敗を見つけないでよ。
隠してたのに」


久しぶりで感覚がわからなかったと言い訳をする瀬野が、不覚にもかわいいと思ってしまった。

本当に私、どうかしている。



「ん、でも美味しいよ」
「本当?」


今度は少し心配そうな様子で、緊張しているのが伝わった。

それもギャップがあってかわいいと思ってしまう。


「私、瀬野のこと嫌いだから本当に不味かったら正直に言うに決まってるでしょ」

「……それはひどいなぁ」
「嘘で美味しいって言われるよりかは信憑性があるんじゃない?」

「確かにそうかも、じゃあ本当だ。
良かった」


ニコニコ笑う瀬野はとても上機嫌で。
私を手中に収めたとでも思っているのか。

そうだとしたら勘違いしないで欲しい。
決して私は瀬野のモノではない。


今もずっと嫌いなのだ、この気持ちは変わらないと。

好き勝手やられて不利な状況が続いていたが、もうあんな失態はしない。

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