愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



もっとお父さんとお母さんに会いたくなって、まだ生きてて欲しかったと思ってしまい、いつも精神的にやられるのだ。


けれど今、瀬野に話したことがきっかけになり。

楽しくて、温かくて、幸せだった日々が思い出されてゆく。



昔はこれらを思い出すことすらも苦しくて辛い、そう思っていたけれど。

なんとも微笑ましく思う。
ああ、幸せだったなぁって。


「ありがとう、瀬野」
「え?俺は別に…」

「今なら前向きに考えられそう」


なんだか強くなれた気がする。
強がるんではなくて、心から強くなれるような。


もし今もまだひとりだったとしたら、辛いことばかり思い出して、苦しくなっていたことだろう。

きっかけって、こんなにも大事なのだ。


「……やっぱり強いな」
「え?」


墓地が見えてきたところで瀬野が一言、そう呟いた。

小さな声だったため、思わず聞き返す。


「川上さん、自分を持っていて強いなって」
「瀬野は逆に自分を持ってないの?」


総長になるくらいなんだから、強さでいえば圧倒的に瀬野の方が上だと思うけれど。

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