愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「じゃあゲテモノ料理でも作ってやろうか」
「そんな意地悪なこと言わないで。食べたらご褒美くれるって言うなら、喜んで食べるけどね」
また“私とキス”なんて言い出してしまいそうで怖いから、あえてスルーで行く。
「おせちの品はこんなものかな…あとは食材調達ね」
まだ冬休みが終わるまで1週間以上ある。
長持ちするものは多めに買っておいた方が良さそうだ。
「そういえば鍋とかしたことないね」
「鍋?」
「そう。ひとりだと鍋をする気にならなかったけど、瀬野もいるなら鍋でもいいかも。何鍋がいい?」
「……なんか俺、すごい贅沢させてもらってるね」
しみじみと言う瀬野に違和感を覚えたけれど。
とりあえず彼の回答を待つ。
「うーん、そうだな…定番の寄せ鍋でも美味しいだろうし、すき焼きとかも憧れるなぁ」
「憧れるの?」
「誰かと温かいご飯を食べられるってこと自体、幸せなことだから」
冗談っぽさなんて一ミリも感じられなくて。
恐らく瀬野の本心であることは間違いない。
一体瀬野はどれほどの重い過去を持っているのだろうか。
「じゃあどっちもやろう」
「えっ…」
「2日分の夜ご飯が決まって楽だし。
私もたまには誰かと鍋でもいいかも」
「……うん、ありがとう」
目を細めて笑う瀬野は喜びを表していて。
私も移ってしまったかのように笑みが溢れてしまった。