愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
ヨメナイ彼




瀬野と私が別れたという噂は瞬く間に広まった。
あの正門でのやり取りを見たという目撃者が相次いだためだ。

沙彩にも心配されたけれど、笑って誤魔化した。



「どうして別れたの?
あんなにも幸せそうだったのに…」

「全部、私のせいなの。
噂通りで間違い無いから」


噂の内容はこうだった。
私が他の男に乗り換えた、あるいは二股していたと。

ほとんどその通りだったけれど、噂はあっという間に校内に広まり、私はここ数日で“最低な女”というレッテルが貼られてしまった。


好感度もだだ下がりで、唯一いつも通り接してくれるのが沙彩だけだった。

春美と真弥も心配はしてくれたけれど、その表情はどこかぎこちなかった。


多分、噂の真意がわからなくて戸惑っていたのだろう。


それもそのはず、噂は勝手に広まるだけで、瀬野はそのことについて一切触れてこなかった。

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